おくちちぶ
奥秩父

冒頭文

秩父という名が大宮を中心とした所謂(いわゆる)秩父盆地に限られていた時代には、武甲山や三峰(みつみね)山などが秩父の高山であるように思われていたのも無理ではない。今から約百年前の文政七、八年頃に出来上った『新篇武蔵風土記稿』を見ると、少し高い山では僅(わずか)に三峰山、武甲山、両神山及(および)雲取山などが挙げられているだけである。三峰山は古くからお犬様で名高い神社のある山で、現に三、四百人位は泊

文字遣い

新字新仮名

初出

「新家庭 夏期臨時増刊」1922(大正11)年8月

底本

  • 山の憶い出 下  
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日