うもんとりものちょう 35 ひだりさしのあいくち
右門捕物帖 35 左刺しの匕首

冒頭文

1 その第三十五番てがらです。 鼻が吹きちぎられるような寒さでした。 まったく、ひととおりの寒さではない。いっそ雪になったらまだましだろうと思われるのに、その雪も降るけしきがないのです。 「おお、つめてえ、ちきしょう。やけにまた寒がらしをきかしゃがらあ。だから、ものごとの正直すぎるってえのはきれえなんだ。たまには寒中にほてってみろよ。冬だからたって、なにもこう正直に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 右門捕物帖(四)
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1982(昭和57)年9月15日