ざっかん 〔わたしたちにとつては〕
雑感 〔私たちに取つては〕

冒頭文

私たちに取つては内生活の窮迫もこの上なく苦しいことには相違はないけれど、物質的の窮迫もまた往々かなしい矛盾を持ち来たしては私たちの生活を揺り動かさうとする。そうして私たちを脅かす。 自分に出来得るかぎりの力を出して働いてさへも必要な金を得ることの六ヶ(むずか)しい人達の方が多数を占めてゐる現在の状態にあつては、物質的な満足を少しでも得やうとするにはたゞ一図にその為めにばかり機械のやうに一生懸命

文字遣い

新字旧仮名

初出

「第三帝国 第四四号」1915(大正4)年6月25日

底本

  • 定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代
  • 學藝書林
  • 2000(平成12)年5月31日