きゅうしゅうより ――いくたはなよしに
九州より ――生田花世氏に

冒頭文

生田さん、私たちは今回三百里ばかり都会からはなれて生活して居ります。 私達のゐます処は九州の北西の海岸です。博多湾の中の一つの小さな入江になつてゐます。村はさびしい小さな村です。私たちは本当にいま東京から大変遠くはなれてゐるやうな気がしたり、それからまた、でもかうして原稿用紙に向つてペンを運んでゐますと矢張り東京にゐるのだと云ふやうな気もします。けれども矢張り遠いのです。お友だちのことなんか考

文字遣い

新字旧仮名

初出

「青鞜 第五巻第八号」1915(大正4)年9月号

底本

  • 定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代
  • 學藝書林
  • 2000(平成12)年5月31日