エスせんせいに
S先生に

冒頭文

余程以前から先生に何か書いて見たい気はありましたけれども私の書いたものなんか御覧になるときつとまた、あの、「フン」と鼻の先で笑はれることだらうと思ひますと嫌気がさして書く気にはなれませんでした。けれども今度こそは書いて見ます。読んで頂かなくてもかまひません、私一人で書いて見ます。 私に対する先生のお心持ちが今どんな状態に在るか私には全然見当はつきませんけれども多分相変らず軽蔑してお出になること

文字遣い

新字旧仮名

初出

「青鞜 第四巻第六号」1914(大正3)年6月号

底本

  • 定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代
  • 學藝書林
  • 2000(平成12)年5月31日