一 この長詩を書くための材料に 本棚を熱心にかきまはしたが 探す本は発見らない 黒表紙で五十頁余りの 吉田りん子といふ詩人の 『酒場の窓』といふ詩集だ、 捨て難いものがあつて 時々本棚の整理で本を売り飛ばす時も 傍に除けてをくのだから 何処かにまぎれ込んでゐるに相違ない 私は彼女を『奇蹟の女王』と名づけてゐる。 二 彼女が突然詩人のグループに現はれると 詩人