シャリアピン
シャリアピン

冒頭文

1 わたしはシャリアピンさまに 永年仕へてゐる蚤 ともに韃靼の古都カザンに生れ ともに暮して当年六十四歳、 夏はシャリアピンのカラーの下の涼しいところに 冬は暖い頭髪の中に 平素は主として鳩尾(みづおち)のあたりに住んでゐる、 早耳、早足は小生の特長 御主人シャリアピンが御承知なくとも わたしはすべてを知つてゐる、 ソビヱットのこと、 旦那の若い頃からの友達ゴリキイ旦那

文字遣い

新字旧仮名

初出

「詩人」1936(昭和11)年3月

底本

  • 新版・小熊秀雄全集第一巻
  • 創樹社
  • 1990(平成2)年11月15日