紙幣よ、 貴様のためにこの私の詩人が 歌ふのを光栄と思へ、 だが貴様はいふだらう、 ——何を生意気な貧乏詩人め、 イノシシとは一体 十円札か百円札か知つてゐるか さういはれてみると一寸胴忘れした 然しそんなことが何の恥辱だらう、 紙幣の図柄をゆつくり 見て居る暇もない程に 貴様はいつも私の右から入つて左へ抜ける まるで駈足だ。 もし私がブルジョアならば、 お前にもつ