わがせんきゅうひゃくにじゅうにねん 01 じょ
我が一九二二年 01 序

冒頭文

私達の友人は既に、彼の本性にかなはない総(すべ)ての物を脱ぎ棄て、すべての物を斥(しりぞ)けた。そして彼自らの手で紡ぎ、織り、裁ち、縫ひ上げたところの、彼の肉体以上にさへ彼らしい軽羅(けいら)をのみ纏(まと)ふて今、彼一人の爽かな径(みち)を行つてゐる。 他の何人に対してよりも、自分自身に対して最善の批評家であるところの彼は、つねにただ、彼の子供として恥しくない子供だけを生み、より恥しくない子

文字遣い

新字旧仮名

初出

「我が一九二二年」新潮社、1923(大正12)年2月18日

底本

  • 現代日本文學大系 42 佐藤春夫集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月25日