たねがみのあおむころ
種紙の青む頃

冒頭文

私は学校から帰るや否や、包みをそこに放り出しておいて、勝手元に駈けあがり、板の間にお膳を持ち出して、おおきな茶碗をかかえるようにしながら、飯櫃から冷たい飯を手盛りにしては、湯をかけて、さらさらと流し込むのである。二杯ばかりはいつか知らぬまに胃袋のなかに流れ込んでいる。三杯目をさらさらと食べながら、障子をあけはなしてある座敷越しに、遠く田圃向うの畑を見渡すと、菜の花が黄いろく咲いている。その菜の花の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆17 春
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年3月25日