しんしょたいこうき 10 だいじゅうぶんさつ
新書太閤記 10 第十分冊

冒頭文

初花(はつはな) 一年。——実にわずか一年の間でしかない。 去年天正十年の初夏から、ことし十一年の夏までの間に、秀吉の位置は、秀吉自身すら、内心、驚目(きょうもく)したであろう程な飛躍を遂(と)げた。 明智を討ち、柴田を斃(たお)した。 滝川、佐々(さっさ)も膝を屈した。 丹羽長秀はひとえに信を寄せて協力し、前田利家は義を示していよいよ旧誼(きゅうぎ)に変るなきを努めている。

文字遣い

新字新仮名

初出

太閤記「読売新聞」1939(昭和14)年1月1日~1945(昭和20)年8月23日<br>続太閤記「中京新聞」他複数の地方紙1949(昭和24)年

底本

  • 新書太閤記(十)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年8月11日