ましこのえどびん
益子の絵土瓶

冒頭文

一 栃木県益子(ましこ)の窯場(かまば)で長らく土瓶(どびん)の絵附(えつけ)をしていた皆川マスというお婆さんのことは、既に多くの方々も知ってお出(い)での事と思います。その山水絵や枝梅(えだうめ)の土瓶は、焼物に眼を注ぐほどの人なら、おそらく誰でも見慣れているものでありましょう。誠にありふれた品物でありますが、それを対象にこの一文を草したく思いますのは、実はそれが美に関する幾多の根本問題を孕(

文字遣い

新字新仮名

初出

「心 第七巻第一号」生成会、1954(昭和29)年1月1日

底本

  • 柳宗悦 民藝紀行
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日