たたろうのざっき |
| 多々良の雑器 |
冒頭文
多々良(たたろう)のことを私が初めて耳にしたのは、昭和二十年頃、黒牟田(くろむた)の窯を訪ねた時、その村の円楽寺で一個の植木鉢を見たその時でした。それは張付紋(はりつけもん)の品で大変心を惹いたので、黒牟田のものかと尋ねましたら、多々良窯のものだという返事を受けました。そうして多々良はここから一里ほど奥にある窯だという話でした。残念にもその折はもう夕方で、多々良まで足をのばす事は出来ませんでした。
文字遣い
新字新仮名
初出
「民藝 第八十四号」1959(昭和34)年12月
底本
- 柳宗悦 民藝紀行
- 岩波文庫、岩波書店
- 1986(昭和61)年10月16日