ぜんらきこう
全羅紀行

冒頭文

昨年の旅はまた今年の旅を誘(いざな)った。朝鮮を訪う人は多いが、私たちのような目的で足を運ぶ者は始めてかもしれぬ。古い物を求める人はあっても、新しい物を捜す者は絶えてなかった。だが古い習慣をよく守る朝鮮では、昔を受けてまだ無造作に美しい品物が方々で出来る。昔の朝鮮を見たいなら、今の朝鮮を見るに如(し)くはない。私たちは今も続いて出来る品物に何があるか、それをもっと見たかったのである。更にまたどんな

文字遣い

新字新仮名

初出

「工藝 第八十二号」1938(昭和13)年3月15日

底本

  • 柳宗悦 民藝紀行
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日