おんだがまへのけねん
小鹿田窯への懸念

冒頭文

誰にも読めぬ大分県日田の皿山たる小鹿田(おんだ)の地名が、今では多くの方々の口に上るまでに至った。つい三十年前には山間に深く隠れて、車も通わぬ無名のこの窯場が、今や内地のみではなく世界からも客を集めて、小型でもバスまでが日々通うに至った。 しかし皮肉なことに、かかる急変が漸次この窯に幾多の危機を招くに至ったのを残念に感じる。今や窯を毒する様々な外敵が迫ってくるからである。実はその責任の一半は、

文字遣い

新字新仮名

初出

「民藝 第百一号」1961(昭和36)年5月1日

底本

  • 柳宗悦 民藝紀行
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日