うんせききこう
雲石紀行

冒頭文

津和野 四年ほど前津和野(つわの)を訪ねたことがある。なまこ塀(べい)の武士屋敷が両側にならんでいる。古格をこれだけよく保った町も珍しい。私はまた美しいこの通りを見たいと思った。だが山間の孤立したこんな町が、どんな運命をもつか。過去の町として見れば美しい、だが来るべき町として、心元ない感じを受けた。二度訪れる折が来た。そうして今度は明るい気持ちでその町を見ることが出来た。地理的にもすべてが遅れが

文字遣い

新字新仮名

初出

津和野「大阪毎日新聞 島根版」1931(昭和6)年5月7日<br>益田にて「大阪毎日新聞 島根版」1931(昭和6)年5月8日<br>石見の焼物「大阪毎日新聞 島根版」1931(昭和6)年5月9日、12日<br>出雲の焼物「大阪毎日新聞 島根版」1931(昭和6)年5月13日、14日<br>工藝と人物「大阪毎日新聞 島根版」1931(昭和6)年5月16日、17日

底本

  • 柳宗悦 民藝紀行
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日