ねむりにんぎょう
眠り人形

冒頭文

一 「お母様、泣いていらっしゃるの?」 よし子は下からのぞくように、母親の顔を見上げました。 「いえ、泣きはしません。なんにも泣くようなことはないじゃありませんか」「でも、お父様の形見が一つずつなくなってゆくのが心細いって、昨日叔父(おじ)様へ泣いておっしゃったじゃありませんか」「この子はまあ」 母親は顔をそむけて、そっと涙をふきました。お正月の銀座はまだ宵の口ですが、身を切るような寒い風が街の

文字遣い

新字新仮名

初出

「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月

底本

  • 野村胡堂探偵小説全集
  • 作品社
  • 2007(平成19)年4月15日