てんさいけいまい
天才兄妹

冒頭文

一 「お嬢さん、あなたはヴァイオリンをひきますか」 隣席の西洋人は、かなり上手な日本語で、斯(こ)う信子に話しかけました。 「ハ、イーエ、私のでは御座いません、これは兄ので——」 信子は少しドギマギしながら、ヴァイオリンの革箱を椅子(いす)の上に置いて、心持顔を赧(あか)らめました。 身体(からだ)も大きく、心持も大人(おとな)びて居りますが、信子はまだほんの十六になったばかり、可愛らしい円

文字遣い

新字新仮名

初出

「少女倶楽部」1928(昭和3)年11月

底本

  • 野村胡堂探偵小説全集
  • 作品社
  • 2007(平成19)年4月15日