ヒューネラル・マーチ
葬送行進曲

冒頭文

呪われた名曲 「どうなさいました、貴方(あなた)」 若い美しい夫人の貴美子は、夫棚橋(たなばし)讃之助の後を追って帝劇の廊下に出ました。フランスから来た某という名洋琴家(ピヤニスト)の演奏が、今始まったばかりと云う時です。 「とても我慢が出来ない、あの曲は俺に取ってはヒドク不吉なんだ」「マア——」 ショパンの「葬送行進曲(ヒューネラル・マーチ)ソナタ」を第一楽章だけ聴いて飛出すのは、随分乱暴な態

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年4月増刊

底本

  • 野村胡堂探偵小説全集
  • 作品社
  • 2007(平成19)年4月15日