らくになったというはなし
楽になったという話

冒頭文

とにかく、靴も高くなった。にも拘わらず、僕は一足の新らしい靴を買ってしまったのである。僕の状態を知っている側の人に言われるまでもなく、身分には不想応な感じもするのであるが、十三円五十銭を投げ出すようにして、この足の野郎を満足させてみたのは今度が生れて初めてなのである。 神楽坂通りの靴屋で買った靴だ。街上一面に右往左往している家鴨の口のようなあの平べったい格好のものとは違って、蔵のようにま

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻97 昭和Ⅰ
  • 作品社
  • 1999(平成11)年3月25日