はし

冒頭文

一 朝霧(あさぎり)がうすらいでくる。庭の槐(えんじゅ)からかすかに日光がもれる。主人(しゅじん)は巻(ま)きたばこをくゆらしながら、障子(しょうじ)をあけ放(はな)して庭をながめている。槐(えんじゅ)の下の大きな水鉢(みずばち)には、すいれんが水面(すいめん)にすきまもないくらい、丸(まる)い葉(は)を浮(う)けて花が一輪(りん)咲(さ)いてる。うす紅(くれない)というよりは、そのうす紅(くれ

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトヽギス 第十三卷第一號」1909(明治42)年10月1日

底本

  • 野菊の墓
  • ジュニア版日本文学名作選、偕成社
  • 1964(昭和39)年10月