はつたびのだいぼさつれんれい
初旅の大菩薩連嶺

冒頭文

一 大正七年の秋の末に初めて黒岳山から大菩薩峠に至る大菩薩山脈の主要部を縦走した時の山旅は、おかしい程故障が多かった。これは余り暢気(のんき)に構えて必要の調査を怠ったり、地図を信用し過ぎたり、又(また)はそれを無視したりした結果でもあったが、どういう訳か其(その)時は誰の心にも少しの屈托がなかった。其日暮しの行きあたりばったりという気持であった。これが失錯(しっさく)続出の最大原因であったよう

文字遣い

新字新仮名

初出

「霧の旅」1933(昭和8)年5月

底本

  • 山の憶い出 下
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日