きんぷさん |
| 金峰山 |
冒頭文
秩父山塊の金峰(きんぷ)山は、私の古い山旅の朧げな記憶の中では、比較的はっきりしている方である。此(この)山の名を知ったのは小学校の何級であったか忘れたが、何でも暗射地図で甲州の北境に栗の毬殻(いが)に似た大きな山の符号があって、それが金峰山だと教えられたのが最初である。お寺を小学校に代用していた田舎のことではあるし、まだ「いろは」も碌(ろく)に知らないうちから『小学生徒心得』という漢文直訳体の本
文字遣い
新字新仮名
初出
「日本山岳会会報」1932(昭和7)年7月
底本
- 山の憶い出 下
- 平凡社ライブラリー、平凡社
- 1999(平成11)年7月15日初版第1刷