つげびと |
| 告げ人 |
冒頭文
雨が落(お)ちたり日影(ひかげ)がもれたり、降(ふ)るとも降らぬとも定(さだ)めのつかぬ、晩秋(ばんしゅう)の空(そら)もようである。いつのまにか風は、ばったりなげて、人も気づかぬさまに、小雨(こさめ)は足のろく降りだした。 もうかれこれ四時過(す)ぎ五時にもなるか、しずかにおだやかな忌森忌森(いもりいもり)のおちこち、遠(とお)くの人声、ものの音、世(よ)をへだてたるものの響(ひび)きにもに
文字遣い
新字新仮名
初出
「ホトヽギス 第十二卷第三號」1908(明治41)年12月1日
底本
- 野菊の墓
- ジュニア版日本文学名作選、偕成社
- 1964(昭和39)年10月