しんまんようものがたり |
| 新万葉物語 |
冒頭文
からからに乾いて巻き縮(ちぢ)れた、欅(けやき)の落葉や榎(えのき)の落葉や杉の枯葉も交った、ごみくたの類が、家のめぐり庭の隅々の、ここにもかしこにも一団ずつ屯(たむろ)をなしている。 まともに風の吹払った庭の右手には、砂目の紋様(もよう)が面白く、塵一つなくきれいだ。つい今しがたまで背戸山の森は木枯(こがらし)に鳴っていたのである。はげしく吹廻した風の跡が、物の形にありありと残っているだけ、
文字遣い
新字新仮名
初出
「文章世界 第四卷第二號」1909(明治42)年2月1日
底本
- 伊藤左千夫集
- 房総文芸選集、あさひふれんど千葉
- 1990(平成2)年8月10日