たざきそううんとそのこ
田崎草雲とその子

冒頭文

()() () 梅渓ばいけい餓鬼草紙がきぞうしの中に住む一九いっく先生に会うの機縁 山谷堀の船宿、角中(かくちゅう)の亭主は、狂歌や戯作(げさく)などやって、ちっとばかり筆が立つ。号を十字舎(じしゃ)三九といっていたが、後に、十返舎(ぺんしゃ)一九(いっく)と改めて、例の膝栗毛(ひざくりげ)を世間に出した。 それが馬鹿な売れ行きをみせて、馬琴物も種彦物も影をひそめてしま

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 夏期増刊号」1932(昭和7)年

底本

  • 吉川英治全集・44 醤油仏(短編集一)
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年4月20日