にほんめいふでん しずかごぜん
日本名婦伝 静御前

冒頭文

一 義経(よしつね)はもろ肌を脱いで、小冠者(こかんじゃ)に、背なかの灸(きゅう)をすえさせていた。 やや離れて、広縁をうしろにし、じっと、先刻(さっき)から手をつかえているのは、夫人(おくがた)の静(しずか)の前(まえ)であった。 八月の真昼である。 六条室町(むろまち)の町中とは思えぬほど、館(やかた)は木々に囲まれている。照り映える青葉の色と匂いに室内

文字遣い

新字新仮名

初出

「主婦之友」昭和15年5月号

底本

  • 剣の四君子・日本名婦伝
  • 吉川英治文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月1日