けんのよんくんし 01 じょ
剣の四君子 01 序

冒頭文

題して剣の四君子という。少し気取り過ぎたきらいがないでもないが、剣の相(すがた)、花の姿、対照はわるくないと、わたくしには感じられる。 菊の高雅な匂い、春蘭の身を懸崖に置きながらの優しさ。雪を凌ぐ梅花の芳烈。水仙の沈潜と謙虚な冷徹。どれも剣の精進と似通わぬはない。 剣に仕えた古人の行道ほど、きびしい道はなかった。妄想を憎むこと※[#「にんべん+丸」、7-6]の如く、懶惰と嬌慢を

文字遣い

新字新仮名

初出

「剣の四君子」全国書房、1943(昭和18)年

底本

  • 剣の四君子・日本名婦伝
  • 吉川英治文庫、講談社
  • 1977(昭和52)年4月1日