よみせばなし
夜店ばなし

冒頭文

* ……大風呂横町と源水横町との間の、不思議とその一つにだけ名のなかつた横町の角に荷を下ろした飴屋のちやんぎり。……そのちやんぎりの一トしきりの音の止んだとき、両側の、どこの屋根の上にも、看板のかげにも、勿論広い往来のどこの部分にも、そのときすでに日のいろは消えてゐた。そして両側の、茂り交した柳の木末に早くも、「夕暮」は下りた。……といふことは、蝙蝠がとんで、水のやうに澄んだ空に早くも星の瞬

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人公論」1931(昭和6)年7月

底本

  • 日本の名随筆72 夜
  • 作品社
  • 1988(昭和63)年10月25日