かわいそうなかのじょ
可哀想な彼女

冒頭文

初七日の朝、わたくしは子供に訊いた。 『お前、おい、ママの顔をおもひ出すことが出来るか?』 『出来るよ。』 『どんな顔をおもひ出すことが出来る?』 『機嫌のいゝ顔だね。』 子供のさういつたやうに、わたくしにも、いまは亡きかの女の機嫌のいゝ顔しか感じられないのである。……といふことは、かの女の去つたいま、わたくしに、素直な、やさしい、もの分りのいいかの女しか残つてゐないのである。…

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆99 哀
  • 作品社
  • 1991(平成3)年1月25日