うえすぎけんしん |
上杉謙信 |
冒頭文
()()生いける験しるしあり この正月を迎えて、謙信(けんしん)は、ことし三十三とはなった。 まだ弱冠(じゃっかん)といっていい。それなのに、服色も装身のすべても、ひどく地味好みであった。長袖の羽織も山繭織(やままゆおり)の鶯茶(うぐいすちゃ)の無地ですましている。大口に似た袴(はかま)だけが何やら特殊な織物らしい。またいつも好んで頭巾(ずきん)をかぶり、新春の装い綺羅(きら)
文字遣い
新字新仮名
初出
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
底本
- 上杉謙信
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1989(平成元)年10月11日