つのくにびと
津の国人

冒頭文

あらたまの年の三年を待ちわびて    ただ今宵こそにひまくらすれ 津の国兎原(うばら)の山下に小さい家を作って住んでいた彼に、やっと宮仕(みやづか)えする便りが訪ずれた。僅(わず)かの給与ではあったが、畑づくりでやっとその日を過している男には、それが終生ののぞみであっただけに、すぐにも都にのぼりたかった。けれども衣服万端の調度にこと欠いている彼に、どうして道中のいりようを作っていいかさ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 犀星王朝小品集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1984(昭和59)年3月16日