たまずさ
玉章

冒頭文

故郷(ふるさと)にて保則(やすのり)様、十一月二十三日の御他界から百日の間、都に通じる松並木の道を毎夜参りますうちに、冬は過ぎ春がおとずれ、いまでは、もう、松の花の気はいがするようになりました。御身(おみ)さまも、なぜ、わたくしがかくも寥(さび)しい松並木の道をおとずれるかについて、きっと、奇異な思いを抱かせられることと思いますが、それをあからさまに申し上げれば、ただ紀介(ノリスケ)様にお目もじし

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1946(昭和21)年3月号

底本

  • 犀星王朝小品集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1984(昭和59)年3月16日