おぎふくうた
荻吹く歌

冒頭文

あしからじとてこそ人の別れけめ    何かなにはの浦はすみうき      大和物語 寝(しん)についてもいうことは何時(いつ)もただ一つ、京にのぼり宮仕(みやづかえ)して一身を立てなおすことであった。練色(ねりいろ)の綾(あや)の袿(うちぎ)を取り出しては撫(な)でさすり畳(たた)み返し、そしてまたのべて見たりして、そのさきの宮仕の短い日をしのぶも生絹(すずし)の思いはかなんだ日の

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人之友」1940(昭和15)年11月号

底本

  • 犀星王朝小品集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1984(昭和59)年3月16日