ぜにがたへいじとりものひかえ 131 かごのゆくえ
銭形平次捕物控 131 駕籠の行方

冒頭文

一 ガラッ八の八五郎はぼんやり日本橋の上に立っておりました。 御用は大暇、懐中は空っぽ、十手を突っ張らかしてパイ一にあり付くほどの悪気はなく、このあいだ痛めたばかりの銭形の親分のところへ行って、少し借りるほどの胆(きも)も据(す)わりません。 夕映えの空にくっきりと浮いた富士を眺めながら、歌にも俳諧(はいかい)にも縁の遠い思案をしていると、往来の人はジロジロ顔を見て通ります。どう面喰らっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1942(昭和17)年3月号

底本

  • 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年8月20日