ぜにがたへいじとりものひかえ 127 やそうのし
銭形平次捕物控 127 弥惣の死

冒頭文

一 「親分、何かこう胸のすくようなことはありませんかね」 ガラッ八の八五郎は薄寒そうに弥蔵(やぞう)を構えたまま、膝(ひざ)小僧で銭形平次の家の木戸を押し開けて、狭い庭先へノソリと立ったのでした。 「胸のすく禁呪(まじない)なんか知らないよ。もっとも腹の減ることならうんと知ってるぜ。幸いお天気が良いから畳を干そうと思っているんだ。気取ってなんかいずに、尻でも端折(はしょ)って手伝って行くがいい」

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年11月号

底本

  • 銭形平次捕物控(十三)青い帯
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年7月20日