ぜにがたへいじとりものひかえ 111 かとんのじゅつ
銭形平次捕物控 111 火遁の術

冒頭文

一 「親分、良い陽気じゃありませんか。植木の世話も結構だが、たまには出かけてみちゃどうです」 ガラッ八の八五郎は、懐ろ手を襟から抜いて、虫歯が痛い——て恰好(かっこう)に頬を押えながら、裏木戸を膝(ひざ)で開けてノッソリと入って来ました。 「朝湯の帰りかえ、八」 平次は盆栽(ぼんさい)の世話を焼きながら、気のない顔を挙げます。 「へッ、御鑑定通り。手拭が濡(ぬ)れているんだから、こいつは銭形の

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年7月号

底本

  • 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年6月20日