ぜにがたへいじとりものひかえ 108 ガラッぱちてがらばなし
銭形平次捕物控 108 ガラッ八手柄話

冒頭文

一 「ね、親分、こいつは珍しいでしょう」 ガラッ八の八五郎は、旋風(せんぷう)のように飛込んで来ると、いきなり自分の鼻を撫(な)で上げるのでした。 「珍しいとも、そんなキクラゲのような鼻は、江戸中にもたんとはねエ」 銭形平次は、縁側に寝そべったまま、その消えた煙管(きせる)を頬に当てて、真珠色の早春の空を眺めながら、うつらうつらとしていたのです。 「あっしの鼻じゃありませんよ。ね、親分、三つに

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年4月号

底本

  • 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年5月20日