ぜにがたへいじとりものひかえ 124 おしむすめ
銭形平次捕物控 124 唖娘

冒頭文

一 「親分」「なんだ、八。たいそうな意気込みじゃないか、喧嘩でもして来たのか」 銭形平次は気のない顔を、八五郎の方に振り向けました。 「喧嘩じゃありませんがね、癪(しゃく)にさわって癪にさわって——」「癪なんてものは、紙入に入れてよ、内懐(うちぶところ)にしまい込んでおくもんだよ。お前みたいに鼻の先へブラ下げて歩くから、余計なものにさわるじゃないか」「へッ、まるで心学の講釈(こうしゃく)だ。親分

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年8月号

底本

  • 銭形平次捕物控(十三)青い帯
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年7月20日