ぜにがたへいじとりものひかえ 105 しおきばのはなよめ |
| 銭形平次捕物控 105 刑場の花嫁 |
冒頭文
一 「八、今のはなんだい」「ヘエ——」 銭形の平次は、後ろから跟(つ)いて来る、八五郎のガラッ八をふり返りました。正月六日の昼少し前、永代橋の上はひっきりなしに、遅れた礼者と、お詣りと、俗用の人が通ります。 「人様が見て笑っているぜ、でっかい溜息(ためいき)なんかしやがって」「ヘエ——相済みません」 八五郎はヒョイと頭を下げました。 「お辞儀しなくたっていいやな、——腹が減ったら、減ったという
文字遣い
新字新仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年1月号
底本
- 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
- 嶋中文庫、嶋中書店
- 2005(平成17)年5月20日