あかいくい
赤い杭

冒頭文

場所の名は今あらはに云ひにくいが、これは某(ある)カフヱーの主人の話である。但(ただ)しその主人とは前からの馴染(なじみ)でも何でもない。去年の一月末の陰(くも)つた夜(よ)に、わたしは拠(よんどこ)ろない義理で下町のある貸席へ顔を出すことになつた。そこに某(ある)社中の俳句会が開かれたのである。 わたしは俳人でもなく、俳句の選をするといふ柄(がら)でもないのであるが、どういふ廻(まは)り合せ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「夕刊大阪新聞」1929(昭和4)年9月1日(推定)

底本

  • 近代異妖篇 ――岡本綺堂読物集三
  • 中公文庫、中央公論新社
  • 2013(平成25)年4月25日