ぜにがたへいじとりものひかえ 048 おふじはとく
銭形平次捕物控 048 お藤は解く

冒頭文

一 「平次、頼みがあるが、訊いてくれるか」 南町奉行配下の吟味与力(ぎんみよりき)筆頭笹野新三郎は、自分の役宅に呼び付けた、銭形の平次にこう言うのでした。 「ヘエ、——旦那のおっしゃることなら、否(いや)を申す私ではございませんが」 平次は縁側に踞(うずくま)ったまま、岡っ引とも見えぬ、秀麗な顔を挙げました。笹野新三郎には、重々世話になっている平次、今さら頼むも頼まれるもない間柄だったのです。

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年2月号

底本

  • 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年5月20日