ぜにがたへいじとりものひかえ 075 きんちゃくきりのむすめ
銭形平次捕物控 075 巾着切りの娘

冒頭文

一 「あッ危ねえ」 銭形の平次は辛くも間に合いました。夜桜見物の帰りも絶えた、両国橋(りょうごくばし)の中ほど、若い二人の袂(たもと)を取って引戻したのは、本当に精一杯の仕事だったのです。 「どうぞお見逃しを願います」「どっこい待ちな、——そんな身投げの極(きま)り文句なんか、素直に聞いちゃいられねえ」「死ななきゃならないわけがございます。どうぞ、親分」 争う二人、平次は叩きのめすように、橋の欄

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1938(昭和13)年4月臨時増刊号

底本

  • 銭形平次捕物控(七)平次女難
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年11月20日