ぜにがたへいじとりものひかえ 060 せみまるのこうろ
銭形平次捕物控 060 蝉丸の香炉

冒頭文

一 「親分、松が取れたばかりのところへ、こんな話を持込んじゃ気の毒だが、玉屋にとっては、この上もない大難、——聴いてやっちゃ下さるまいか」 町人ながら諸大名の御用達を勤め、苗字(みょうじ)帯刀(たいとう)まで許されている玉屋金兵衛は、五十がらみの分別顔を心持翳(かげ)らせてこう切出しました。 「御用聞には盆も正月もありゃしません。その大難というは一体何で?」 銭形の平次は膝を進めます。往来にはま

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1937(昭和12)年2月号

底本

  • 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年5月20日