くろべきょうこく
黒部峡谷

冒頭文

立山山脈と後立山山脈 地質学者の説に拠(よ)ると、今日普通に日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、凡(およそ)南十度西より東十度北即ち南南西から東北東に向って並走して居る数条の連脈から成っているということである。さもあらばあれ高い山のみを渇仰の標的として、峰から峰へと縦走する気儘(きまま)な山岳の巡礼は、勝手に是等(これら)の山脈を二にも三にも胴切にして、低い山はそれが主脈

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日」1919(大正8)年11月

底本

  • 山の憶い出 下
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日