みいら
木乃伊

冒頭文

大キュロスとカッサンダネとの息子(むすこ)、波斯(ぺるしゃ)王カンビュセスが埃及(えじぷと)に侵入(しんにゅう)した時のこと、その麾下(きか)の部将にパリスカスなる者があった。父祖は、ずっと東方のバクトリヤ辺から来たものらしく、いつまでたっても都の風(ふう)になじまぬすこぶる陰鬱(いんうつ)な田舎者(いなかもの)である。どこか夢想的(むそうてき)な所があり、そのため、相当な位置にいたにもかかわらず

文字遣い

新字新仮名

初出

「光と風と夢」筑摩書房、1942(昭和17)年7月15日

底本

  • ちくま日本文学012 中島敦
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2008(平成20)年3月10日