きつねつき
狐憑

冒頭文

ネウリ部落のシャクに憑(つ)きものがしたという評判である。色々なものがこの男にのり移るのだそうだ。鷹(たか)だの狼(おおかみ)だの獺(かわうそ)だのの霊(れい)が哀(あわ)れなシャクにのり移って、不思議な言葉を吐(は)かせるということである。 後に希臘(ギリシャ)人がスキュテイア人と呼んだ未開の人種の中でも、この種族は特に一風(いっぷう)変っている。彼等(かれら)は湖上に家を建てて住む。野獣(

文字遣い

新字新仮名

初出

「光と風と夢」筑摩書房、1942(昭和17)年7月15日

底本

  • ちくま日本文学012 中島敦
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2008(平成20)年3月10日