セトナおうじ(かだい)
セトナ皇子(仮題)

冒頭文

メムフィスなるプタの神殿に仕うる書記生兼図案家、常にウシマレス大王に変らざる忠誠を捧ぐる臣、メリテンサ。謹んで之(これ)を記す。この物語の真実なることを、あかしし給う神々の御名は、鷹神ハトル、鶴神トト、狼神アヌビス、乳房豊かなる河馬神アピトエリス。 百合の国上埃及(エジプト)の王にして、蜂の国下埃及の王、アモン・ラーの化身、輝けるテーベの主、ウシマレス大王の一子セトナ皇子は、夙(つと)に

文字遣い

新字新仮名

初出

「中島敦全集 第四巻」文治堂書店、1959(昭和34)年6月刊

底本

  • 中島敦全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年5月24日