ぜにがたへいじとりものひかえ 040 おおむらひょうごのめだま
銭形平次捕物控 040 大村兵庫の眼玉

冒頭文

一 「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島(むこうじま)を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」 銭形平次はいかにも好い心持そうでした。 「悪いとは言いませんがね、親分」「何だ、文句があるのかえ」「こう、金龍山の鐘が陰に籠(こも)ってボーンと鳴ると、五臓六腑へ沁み渡りますぜ」「怪談噺(かいだんばなし)てえ道具立じゃないよ。見や、もう月が出るじゃないか」「へッ、へッ、真っ直ぐに申上げると

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年5月号

底本

  • 銭形平次捕物控(二)八人芸の女
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2004(平成16)年6月20日