ぜにがたへいじとりものひかえ 058 みなげするおんな
銭形平次捕物控 058 身投げする女

冒頭文

一 ガラッ八の八五郎は、こんないい心持になったことはありません。 親分の銭形平次の名代(みょうだい)で、東両国の伊勢辰(いせたつ)でたらふく飲んだ参会の帰り途、左手に折詰をブラ下げて、右手の爪楊枝(つまようじ)で高々と歯をせせりながら、鼻唄か何か唄いながら、両国橋へ差しかかって来たのは真夜中近い刻限でした。 借着ながら羽織を引っかけて、懐中(ふところ)には羅紗(ラシャ)の大紙入、これには

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年12月号

底本

  • 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
  • 嶋中文庫、嶋中書店
  • 2005(平成17)年1月20日